「イロアール(IROR)」デザイナー明村由紀さんにインタビュー【Designer Interview vol.01】

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2021.04.28
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2004年にスタートして17年、リメイクからスタートしたブランド、イロアール(IROR)。デザイナー明村由紀さんが、服づくりに込める思いを語ってくれました。

お客さまに寄り添う服をつくりたい

ブランドを立ち上げたときはまだ20代でしたが、ブランドもお客さまも一緒に年月を「重ねてきた」と感じています。デザインするときはいつもお客さまや友人の顔を思い浮かべながら考えることが多いですね。

大人になると、以前は抵抗なく着ていたテイストが似合わなくなってしまったり、デコラティブな要素がしっくりこなくなることがありますが、大人になっても楽しんで着られるクリエイティブなひと癖があるものをつくりたいと思っています。昔とは異なる環境で生活していても、好きな服へのときめきや新鮮な気持ちを味わい続けてほしいです。

 

お客さまの希望を聞いてつくることも多いですね。たとえば、小さな子どもがいるから動きやすさを考えなきゃいけない、だけど自分の好きなものには囲まれていたいという気持ちやアイディアを汲み取りながら生まれる商品もあります。ただ自分がつくりたいものをつくるのではなく、お客さんと一緒につくってきたなと思いますし、これからもそうありたいと思います。

女性が美しく見える工夫をディテールに

着る人を美しく見せるための工夫が服のディテールになっていることが多いです。たとえば首もとをすっきり長く見せるために、ジャージのネックラインにダーツをいれて、ちょっと立ち上がるようなデザインにしたり、脚を長く見せるための工夫や後ろ姿の美しさにもこだわっています。後ろ姿って意外と大切ですよね、案外他人からは見られているのに、自分からは見えないから尚更。あとは忙しくてインナーを考える余裕がなくても一枚で着られるよう、ワンピースの脇の開き具合も下着が見えないように工夫しています。

女性らしく、どこかちゃんとした“品”を感じるみたいなのが理想。ずっとブレていないことのひとつです。ちょっとダボっとしたシルエットでも、ゆったりとだらしないは違うと思うので、抜け感の出し方は特に大切にしています。

ブランド立ち上げから、これまで

20代前半は代官山のセレクトショップで働いた後、当時の上司に誘われてショップの立ち上げに参加しました。そのお店が全然売れなくって。すぐ閉店となってしまい、売れ残ったミリタリー古着をお給料の代わりにもらって、リメイクして売ろうと考えました。就職するまでの交通費や生活費が稼げればという気持ちで、合同展に出展していたのですが、お客さんもついてきてブランドとして成り立っていきました。

 

それまでは自己流で家庭ミシンで作っていましたが、その後は学校にも通って少しずつ専門的なことを覚えていって、今に至ります。本当に手探りのスタートだったので、周りのたくさんの方に助けていただきましたね。こんなに大変だと最初から知っていたら、やらなかったかも(笑)。とにかく突っ走ってきて、今日まであっという間でした。

環境にも人にも心地よい服づくりを

コロナ禍を経て「サスティナビリティ」に改めて注目が集まりましたよね。うちでできることはなにか、を考えることも増えました。もともとリメイクをやっていたというのもあって、イチから新しいものを使ってつくる、ということにこだわらなくてもいいのでは?と思うようになりました。これまで自分もたくさん製品をつくらないといけないと思っていたんですけど、それって本当に意味のあることだろうか?とも思うようになりましたね。

 

日々状況が変わるなかで、とにかく動いてみようと思って、生産工程で出た残布や、生地屋さんの倉庫に眠っていたり処分予定だった素材を使って服をつくることを新たに始めました。

見るからにエコだったり、サスティナブルということじゃなくて、思わず手にとったものが実はそうだった、というのが理想。お客さまに「サスティナビリティをテーマにつくりました!」と受け取ってもらうのではなくて、いつもと同じように受け入れてもらえることがひとつの正解かな、と。

 

そんなふうに社会や環境に対してなにかできることがないかなと思っていた時に、アナザーアドレスが立ち上がると聞いて、サスティナブルという観点や目指している世界観に共感して参加させていただくことにしました。店頭で試着するという機会も実際減ってきてしまっているので、レンタルでトライする機会が増えるというのがすごく良いですよね。いろんな服を着ることで、自分を知るきっかけにもなりますから。サービスを通じて改めて服を着る喜びや楽しさを知ってもらえたらと思います。


■プロフィール

明村 由紀 Yuki Akemura

セレクトショップにてバイヤーを経験後、2004年リメイクブランド「iro;-R-」を設立。

2012年よりプロダクトラインをスタート。2019年SSよりブランド名を「IROR」と改め、「NEW BASIC」をコンセプトにSS/AW年2回の展示会を開催。自社ブランドと並行してさまざまなブランドのデザイン企画を行う。

 

IROR公式ホームページURL:https://www.irorweb.com/

IROR公式インスタグラム: https://www.instagram.com/irorbm/