「ミントデザインズ」デザイナー勝井北斗さん&八木奈央さんにインタビュー、“着る人も見る人もすべての人が楽しめる服を作っていきたい”

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2024.07.29
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「3歳から100歳までの人が楽しめるデザインを」をブランドビジョンに掲げ、洋服というカテゴリーにとらわれず、活動の幅を広げているミントデザインズ(mintdesigns)。アナザーアドレスはこの夏、全6型の別注浴衣を作っていただきました。

 

今回は、そんなミントデザインズのデザイナー・勝井北斗さんと八木奈央さんにインタビューを実施。おふたりがミントデザインズを立ち上げた経緯から、別注浴衣のこだわりポイントまでたっぷりとお話をお伺いしました。

大学の同級生から「ミントデザインズ」のデザイナーに

——おふたりはロンドンの名門、セントラル・セント・マーチンズの同級生だそうですが、学生時代から交流があったのでしょうか?

 

勝井さん:八木はファッションデザイン科に、私はテキスタイルからファッションデザインを考えるファッションデザイン&プリント科にいたのですが、お互い使えるファシリティが違ったので、当時からよく相談しあっていました。

 

八木さん:そうですね。勝井がいた学科にはテキスタイルを作れる設備があったので、私がテキスタイルを作りたいと思ったときは勝井のところに行ったり、逆に私の学科にはパタンナーの先生がたくさんいたので、勝井が造形的なアプローチをしたいと思ったときは私の学科に来たりと度々交流がありました。

 

——一緒に作品を作ることもあったのでしょうか?

 

勝井さん:お互い好きなものは違いますが、こういうのはしたくないよねっていうものが同じだったので、相談し合う流れで一緒に作ったものを学内コンペに出品するようになりました。好きなものが違うからこそ、互いに引き出しを増やすことができましたし、良い経験だったなと思います。

——学生時代から一緒に作品を作っていたおふたりですが、どのような経緯でブランドを立ち上げることになったのでしょう?

 

八木さん:ふたりとも同じ年に大学を卒業したのですが、私も勝井も1年くらいロンドンに残って、その後、同じようなタイミングで帰国したんです。そのときに「一緒にブランドをやらないか?」と誘われました。

 

勝井さん:学生時代はデザイナーズブランドでインターンをやっていましたし、卒業後にブランドを立ち上げる先輩も多かったので、私にとってブランドを始めるということは、割と自然な流れでした。私と八木はお互いの作品を見ていましたし、作風や性格もある程度分かっていたので、この人とだったら一緒にブランドを立ち上げても良いかなと思って声を掛けたんです。本人がどう思っていたかは分かりませんが(笑)

 

八木さん:一時は就職も考えていたので、最初は「よし、一緒にやろう」というよりは、ちょっと手伝うイメージでした(笑)当時は会社を立ち上げたというよりも、ブランドを始めたという意識の方が強かったですね。

——そんなおふたりがスタートしたミントデザインズは、ファッションをひとつのプロダクトデザインとして解釈して活動されていますが、そこにかける思いとはいったい何でしょう?

 

勝井さん: 私たちがブランドを立ち上げた2000年初頭は、ライフスタイルとファッションのクロスオーバーが始まった時期でもありました。ミッドセンチュリーなどの家具が流行って、東京都内のいろんな場所でデザインフェスティバルが開催されていましたし、洋服店にインテリアグッズが置いてあったり、逆にインテリアショップに洋服が置いてあったりして。

 

そういう時期に帰国したので感化されましたし、ファッションだけでなくライフスタイルなど他の分野とクロスオーバーしながら、時を経ても魅力的だと感じてもらえるデザインを提案していきたいと考えるようになったんだと思います。もちろん服にトレンドを取り入れることは大事ですし、実際に取り入れながら服作りをしていますが、それ以上に家具や建築のようなロングスパンで使われるものをデザインするように衣服をデザインしていきたいと考えています。

 

八木さん:そうですね。加えて、ブランドコンセプトに「3歳から100歳までの人が楽しめるデザインを」と掲げているように、いろんな人から愛されるデザインを提案していきたいと思っています。もちろん、私たちが作っている服は子ども服ではないので3歳の子どもが着られるわけではありませんが、見て楽しむ分には3歳から100歳までどなたも楽しめると思うんです。中に入って使うだけでなく、外から見ても楽しめる建築と同じように、着る人も、見る人も、老若男女問わず誰でも楽しめる服を作っていけたら素敵だなと考えています。

——デザインする上で1番大切にしていることは何ですか?

 

勝井さん:楽しみながら作ることですかね。やっぱり作り手の気持ちってデザインに表れるものだと思いますし、結果として着る人にも伝わるものだと思うんです。だから、当然のことですが、楽しみながら、夢中になりながら作るようにしています。

 

八木さん:たしかに。ミントデザインズの標語の1つでもある「ハッピーミステイク」という言葉に繋がることかもしれませんね。ものを作る過程では、色がずれたり、柄がずれたりと様々なミスが起きるのですが、私たちはその偶然の出来事を楽しむ遊び心を常に持っていたいと思っています。思ったものと違うものができたとしても、気持ちに余裕があれば、新しい気付きがあるかもしれませんからね。

2024年秋冬コレクションより。写真左のジャケット、写真右のワンピースはアナザーアドレスで展開予定

——素敵なコレクションが生まれる背景には「ハッピーミステイク」という言葉があったのですね!コレクションのテーマはどのように決めているのでしょう?

 

八木さん:お互い気になっていることを常に蓄積してあるので、それを出し合いながら、ブレインストーミングして決めています。キーワードを出し合ったり、イメージボードに張り出したりしていくと、言葉は違っていてもリンクする部分があったり、方向性が同じものがあったりするので、そういったところを見つけながらまとめていくという作業をしています。

 

勝井さん:昔やりたかったけどできなかったことを改めてやってみることもありますし、より強い思いを持っている方に寄ることもあります。本当にケースバイケースで、その都度相談しながらやっています。

2024年秋冬コレクションより。写真左のトップス、写真右のジャケットはアナザーアドレスで展開予定。

——インスピレーションはどこから得ているのでしょう?

 

勝井さん:ありきたりですが、散歩したり、旅行したり、映画を観たり、美術館巡りしたり、図書館に行ったり……そういうところからインスピレーションを得ています。建築家とか他の分野のデザイナーと話すのも刺激になりますね。

 

八木さん:「リサーチするぞ」と思ってリサーチすると予定調和になって面白いものが生まれないので、勝井と同じように街歩きしたり、人間観察したりしてアイデアをストックしています。

 

——おふたりは20年以上ブランドを続けていらっしゃいますが、原動力になっているものは何なのでしょう?

 

八木さん:“楽しい”という気持ちだと思います。20年続けようと思ってやってきたわけではないですし、いただいた仕事がどういうものであれ、やっぱりその時々で楽しかったから続けられているのだと思います。

「服」とは食べ物と同じくらい重要なもの

——おふたりが服に興味を持ったきっかけを教えてください。

 

勝井さん:物心ついてからおしゃれをしてみたいと思って、自然な流れで服に興味を持ちました。最初は自分が着るものにだけに関心があったのですが、徐々に人が着ているものや、音楽や絵画など洋服を取り巻くカルチャーにも興味を持つようになって、どんどんのめり込んでいきました。

 

八木さん:私は親戚にファッション関係の仕事をしている人が何人かいて、小さいころから一緒にショッピングをしては、色々なものを着せてもらっていたのですが、中には作ってもらうこともあって。子どもながらに「この色がいい」とか「この丈がいい」とか指示させてもらっていて(笑)それが本当に楽しくて、服が好きになっていったんだと思います。

——小さいころからお好きだったんですね。それでは、そんな「服」とはおふたりにとってどのような存在ですか?

 

八木さん:作る立場としてではなく着る立場としての考えになりますが、服はその日の気分やその日の自分をプレゼンテーションできるものだと思っています。今日はリラックスした自分を楽しみたいとか、今日はちょっとキャリアを意識した自分を楽しみたいとか、そういった日々の自分をコーディネートできる大切なものだと感じています。

 

勝井さん:服って食べ物に似ていますよね。中華を食べたい日もあれば、イタリアンを食べたい日もあって、気分によって食べたいものが変わってくる。しかも、どんなものを食べるかによって1日が変わります。食事も服も毎日楽しめるものですし、生まれてから死ぬまで共に生きていくものと考えると、本当に大事なものですね。

別注浴衣のこだわりポイント

左から)レース柄(ブルー)パズル柄(ブラック)切子柄(オレンジ)
左から)レース柄(ネイビー)パズル柄(ブルー)切子柄(グリーン)

——今回、別注浴衣を6型作っていただきました。柄はすべてミントデザインズのアーカイブグラフィックをベースにしていますが、それぞれのこだわりポイントを教えてください。

 

八木さん:「切子柄」はクラシックな和柄なので、華やかなパステルカラーを使って西洋的に解釈しました。逆に「レース柄」は洋風な柄なので、藍色や淡い水色という浴衣にありそうな色を使うことで浴衣に馴染むように工夫しています。

 

勝井さん:「パズル柄」も浴衣の柄としては珍しいので、面白い仕上がりになったと思います。この柄は洋服に使っていたときと比べて、柄そのものをかなり大きくして落とし込んでいます。洋服では絶対にやらないようなサイズですが、ここまで大胆にデザインしてもしっくり来るのは浴衣ならではだと思います。

——洋服をデザインすることと、浴衣をデザインすること。1番大きな違いは何でしょうか?

 

八木さん:形が決まっているか、いないかだと思います。洋服はシルエットから柄まですべて自分たちで決める必要がありますが、浴衣は形が決まっているので、その枠組みの中でどのように表現するかを考えることがメインになります。それが大きな違いであり、和服をデザインするということの面白さだと思います。

サステナブルな取り組みについて

アナザーアドレスでは環境負担軽減に向けた様々な取り組みを行っています。今回のインタビューでは、ミントデザインズのサステナブルな取り組みついてもお伺いしました。

 

—— 環境やサステナブルといった観点で取り組まれていることはありますか?

八木さん:サステナブルな取り組みとして始めたわけではないのですが、ミントデザインズでは創業当時から紙を原料としたボタンを使用しています。単純に紙の質感が好きだったので、硬くて水に強い紙のボタンを開発したのですが、「サステナブル」という言葉が使われ始めてからは「サステナブルなボタンですね」とおっしゃっていただくことが増えたように思います。

 

勝井さん:加えて、ボタンは創業当時から同じデザインのものをずっと使っているので、廃棄することがないんです。そういった観点から見ても「サステナブルなボタン」と言えると思います。もちろん、在庫や残布をなるべく残さないようにしていますが、ミントデザインズらしいサステナブルな取り組みとして1つ挙げるのであれば紙のボタンだと思います。

——素敵なお取り組みですね。では最後に、アナザーアドレスをご利用いただいている会員の皆様にメッセージをお願いします。

 

八木さん:アナザーアドレスは新しい服にチャレンジしやすいサービスだと思うので、新しい自分に出会えると思って普段着ないような服にも積極的にトライしてもらえると嬉しいです。

 

勝井さん:そうですね。着るものによって自分の見え方も変わってくると思うので、どんな自分を演出したいのか考えながら、楽しんでもらえたらと思います。


■勝井北斗さん

1973年、東京に生まれる。パーソンズスクールオブデザインニューヨークで学んだ後、

セントラルセントマーチンズ カレッジ オブ アート&デザイン(ロンドン)卒業。

 

■八木奈央さん

1973年、大阪に生まれる。同志社大学にて美術芸術学を専攻。

卒業後渡英し、セントラルセントマーチンズ カレッジ オブ アート&デザイン(ロンドン)卒業。

 

 

ミントデザインズ公式サイト:https://mint-designs.com/


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